Hound Dog Taylor

岸上&高橋の
    "Blues列伝〜ルーツはここだ!〜"



Hound Dog Taylor



というわけで、まずはこれを聴けー!!




僕の出会いの曲です。YouTubeで出会いました。いい時代になったもんだ。
とにかく陽気で荒くて粗くてぐっちゃぐちゃで、底抜けにポジティヴで、それでいてむっちゃかっこいいですよね!!ですよね!!
限りなくパンクに近いブルースなのです。たぶん。

そんなHound Dog Taylorさんは生き様もパンクなおっさんでありまして、妙なエピソードてんこもりです。

1915年ミシシッピ生まれ、本人曰く1917年生まれ ←まずここからしてぶっとんでますよねー!覚えとけよねー!
本名はセオドア・ルーズベルト・テイラーという、偉い人の名前付けときゃええやろ的な適当なお名前で、20歳までギター弾いたことなし、っちゅうのは僕としてはなかなか心強いお話で、んでまあいろいろあって1942年、白人の人妻に手を出して何やらヤバいことになってしまいます。当時のことですから黒人差別的なモヤモヤが今以上にうずまいていたわけで、そんななかでの略奪愛、さすがテイラーさん!としか言いようがないですね!
ただまあ命は大切ですから、人妻の旦那さんに殺されちゃう前にシカゴにとびます。ここでブルースのメッカ、Chicagoをチョイスしちゃうテイラーさん、さすがですねー!

こっから15年くらいは昼の仕事やっては辞め,やっては辞めで、夜はクラブでブルースしちゃう日々を送ります。おそらくこの間のどこかでなんですが、スライドギターの超大御所エルモア・ジェイムズと出会います(!)。そんなわけで彼ゆずりのスライドギター弾きになったのでした。

そして1960年、とうとうレコーディングの時がやってきます! が正直微妙な出来です。↑のようなパワフルなサウンドではなく、「こんな風に弾いときゃOKでるやろ」的なサウンドです。ブルースハープの名手,リトル・ウォルターと共演してる映像なんかもありますが、なんともパッとしないです。
そんなわけで、何度かシングルを録ってまたいつもの日々に戻ります。

ここからなにくそ的な怒りなのか何かもうふっきれちゃったのかよくわかりませんが、テイラーさんのサウンドが激変します!この激変過程の音源は聴いたことないです。持ってる人いたら教えてください。

そんなこんなでいつの間にか完成しちゃってたテイラーさん、1969年いつものクラブでブルースしてると、ブルース・イグロアという青年に“発見”されます。
「なんじゃこのおっさん!」ってことで、青年は勤めてたレコード会社を辞めて、新レーベルを起ち上げます。御年54?歳のおっさんに人生賭けちゃうのです。こうして出来たのが「アリゲーター・レーベル」。あんまり知りませんがでっかいとこみたいです。賭けてよかったね!

できたてのレーベルなんで経済面はいまいちだったみたいですが、ここからはサウンド的には文句なしのハウンド・ドッグ・テイラーさんなのでした。1970年はミシガン州で開かれた「アンアーバー・ブルース・フェスティバル」(↑の音源はそのときの)に参加、翌年1971年、ついに初のアルバムリリースです!ブルース・イグロアさんの売り込みで売り上げも上々だったらしいよ!やったね!



「Hound Dog Taylor and the HouseRockers」 Hound Dog Taylor and the HouseRockers
Hound Dog Taylor and the HouseRockersの1stアルバムです。
このバンドはGt&Voのテイラーさんに加え、もう一人のGt、ブリュワー・フィリップスさん、Drのテッド・ハーヴィーさんによるバンドで、1965年あたりにはこの3人が確定したみたいです。


1曲目のあやし〜い雰囲気から一転、2曲目Walking The Ceilingで早くもぶっとんじゃう素敵な構成がいいですね!あとはひたすら音に身をゆだねましょう。そして部屋で一人踊り狂いましょう。ぼくは実践しています。


3曲目と9曲目一緒ちゃうん?とか言ってはいけません。似てるだけです。テイラーさんにはよくあることです。


この人のギターはほんと独特の音で、どうやってこんな音でてんのかといいますと、KAWAI S-180っちゅう日本製のパチモンギターをシルバートーンっちゅうメーカーのアンプに繋ぐとこんな音になっちゃうらしいよ!S-180欲しー!!
2ndアルバムではまた少し装備が違ってるのでちょっとだけ音色が違います。このスカスカぶっとびサウンドが聴けるのは1stだけ!!
さあ君も買っちゃうのだ!紙ジャケが売り切れないうちに!


指が6本あったらしいっすよ。テイラーさん。

ちなみに6本目の指はギター弾くのに邪魔ってことで自分で切っちゃいます。もうなんかむちゃくちゃですね!

↑はインストだったので、今回は歌ものを載っけときます。


「Wild About You Baby」です。エルモア・ジェイムズさんの曲です。
テイラーさんは歌もよいですね!!実に楽しそうに歌う人です。


さてさて1971年、待望の1stアルバムを作製したテイラーさんは、1973年2ndアルバム「Natural Boogie」をリリース、そして1975年、ライブ録音の3rdアルバム「Beware of the Dog! 」発表前にお亡くなりになります!早ぇ!!まだまだこれからやないか!!
享年60歳、死因はガンでした。いつのまにか60歳だったことにはビックリですが、とっても残念ですね。もっともっと聴きたかったのにー!!




・・・というわけで色々と掘り下げてみましょう。 まずは2ndの「Natural Boogie」

2年ぶりのアルバム、次はどんな感じやねん?と思った方、ご安心ください。
いっしょです!!ノリいっしょです!!
はい。テイラーさんはどこまでもテイラーさんなのでした。


しいてあげれば、チューニングがオープンE付近からオープンD付近に移ったり、ギターがKAWAI SH-40Vになったりしたらしいよ!でもまあそんなことはどうでもいいのです。相変わらずの素敵なサウンドありがとうございます。
チューニングが「付近」なのは、彼らのチューニングがアバウトだからです。きっちりオープンEorDでは合わなかったりします。やってみましょう。

おすすめ曲はB-2「Buster's Boogie」ですね。これまた「Taylor's Rock」路線のインストなんですが、さらに勢いが増してる!ような気がする!
「インスト曲はテクニックが必要」という固定観念をあっさりと破壊してくれる何とも気持ちいい曲です。素敵すぎます。


あ、そうそう。彼らの録音は「いつもライブでやってるように」ってことですべて一発録りです。そんなポリシーもいいですね!




そしてそして、残念ながら遺作となってしまった3rd「Beware of the Dog! 」
さあ、そんな彼らのライブはどんな感じやねん?と思った方、ご安心ください。
いっしょです!!ノリいっしょです!!
そこにさらに会場の空気がオマケつきな感じです。お得やね!

相変わらずのテイラーさん、テッドさんに加えて、いつもより多めに歪ましちゃうフィリップスさん。いいよいいよー!

このライブ盤には1st、2ndに入ってない曲が7曲!と大変盛りだくさんな内容になっております。
おすすめ曲はA-5「Comin' Around the Mountain」とB-1「Let's Get Funky」でしょうか。ラストの「Freddie's Blues」もいいですね。
「Comin' Around 〜」はトラディショナル曲だそうです。カントリー?風テイラーさんが楽しめます。「Let's Get Funky」は延々1コードみたいな、いや1コード曲ではないんですが、とにかくノっちゃいます!ファンキー。
「Freddie's Blues」はまさかのしっとり曲。テイラーさんがトレモロかけちゃいます!これが意外とええ曲なのです!ほんとです!

「遺作になっちゃったけどしみじみと聴くんじゃねぇぜ!」とブルース・イグロアさんも言っています。まさにその通りの熱々ライブアルバムです。是非ゲットしましょう!





最後にテイラーさんとフィリップスさんの友情物語をひとつ。

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テイラーさんとフィリップスさんは大のなかよし。仲が良すぎてへヴィーなジョークをぶちかましちゃうこともしばしば。
ある日、フィリップスさんはいつものノリでこう言います。「いやー、お前の奥さんとヤっちゃったけど、よかったわー!」
するとゴキゲンななめだったテイラーさんは怒ってピストルを取り出しちゃいます…。

ズキューン!!


・・・それからというもの2人は交流を絶ってしまいます。
が!テイラーさんが病院でもはや長くないぞとなったその時!
フィリップスさんがお見舞いに駆けつけます。


「…ごめんな。」「うん。」


その2日後、テイラーさんは帰らぬ人となってしまったのでした。


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・・・・・・なにこの話。





参考ページ:「Biography:Hound Dog Taylor」







えー、オリジナルアルバム3枚を紹介したところで、テイラーさんシリーズひとまず休止です。まだ発掘音源がたっぷりあるのですが、それはまたいつかやりましょう。




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